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開湯1000年の歴史を誇る鳴子温泉郷。5つの温泉地が集まるその中心地、鳴子温泉は“こけしの郷”としても知られています。9月1~3日に開催される第63回「全国こけしまつり」は、地元客のみならず、全国のこけしファンも訪れる鳴子温泉の秋の風物詩。伝統こけしの実演販売やこけしコンクールの入賞作品の展示などこけしに関するさまざまなも催しが行なわれます。特にこけしの張りぼてが温泉街を練り歩く、シュールで迫力満点のパレードは必見ですよ。
鳴子温泉は、宮城県の北西部、大崎市にあります。JR古川駅から陸羽東線に乗り換えて約50分。JR鳴子温泉駅に降り立つと、温泉地特有の硫黄の香りが漂ってきます。
鳴子で温泉が発見されたのは承和4(837)年のこと。古くから豊富な湧出量と多彩な泉質を誇る東北随一の湯治場として知られてきました。周辺には松尾芭蕉や源義経ゆかりの名所も点在する歴史ある湯の郷です。
鳴子温泉は伝統こけし「鳴子こけし」の産地としても有名。東北地方の温泉地で湯治客のみやげとして作られてきたこけしは、11系統あり、それぞれの土地ならではの特徴をもっています。鳴子こけしの特徴は、頭部を回すとキュキュと音がすること。緩やかにくびれた胴には、華やかな菊や楓などが描かれます。丸い鼻に幼さを感じさせる柔らかな表情がなんとも可憐です。
こけしの街らしく500mほどの温泉街のそこかしこには、こけしモチーフの看板やポールが。こけし型の郵便ポストやこけしの電話ボックスもあり、こけしモチーフを探しながらのそぞろ歩きもまた鳴子温泉の楽しみのひとつです。
そんなこけしの街・鳴子で、毎年9月に開催されるのが「全国こけしまつり」です。開催期間は3日間。2017年は9月1日(金)、2日(土)、3日(日)に催されます(1日はこけし供養祭のみ)。祭り初日の夕方になると、街の高台に建つ温泉神社で、奉納された古いこけしたちに火が放たれ、こけしの供養祭が執り行なわれます。
祭り本番は、2日目と3日目。鳴子小学校を会場に、こけしの実演展示即売会やこけし座談会、こけしコンクールの受賞作品などが展示されます。即売会では、お目当ての工人のこけしを手に入れるために全国各地から集まった人々の行列が朝早くからできるほど。鳴子こけしの工人だけでなく遠刈田系や津軽系などの工人やこけしも登場し、会場はこけしファンたちで盛り上がります。
祭りがもっとも盛り上がるのが、2日目の夜に開催されるフェスティバルパレードです。神輿やこけし柄の浴衣を着た踊り手とともに、人間よりひと回り背の高い20体ほどの張りぼてこけしが温泉街を練り歩きます。こけしの白い肌は夕闇の中に浮き上がり、朴訥なほほ笑みを振りまきながら街を歩く様はなんともシュールで迫力満点。こけしの中は視界も狭く、手足の動きも不自由なため、誘導に手を引かれながら、巨大なこけしの張りぼてが上下ににょきにょき、左右にふらふらと独特な動きで進んでいきます。
沿道は、張りぼてこけしをひと目みようと、カメラを構える観覧客で埋め尽くされ、街の熱気は最高潮に。いつものしっとりとした温泉街とは別世界に迷い込んだようです。張りぼてこけしの一団が現れると一斉にシャッターが切られ、歓声があがります。こけし達はとてもフレンドリーなので、観覧客との記念撮影のリクエストにも積極的に応えてくれます。
こけしファンはもちろん、こけしに興味のなかった人もその世界に引き込まれる「全国こけしまつり」。祭り期間中は、共同浴場「滝の湯」の入浴料が無料だったり(3日のみ)、「日本こけし館」が入館料無料(2、3日)だったりと、お得なサービスも実施しています。鳴子温泉街やその周辺を観光しながら湯浴みも楽しみつつ、こけし尽くしの3日間を堪能してみてはいかがでしょうか。
2017年8月時点での情報です。