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今日は「だし廊」かなぁ。そんな日が月に何度かあります。会社から近い国分町の「だし廊-NIBO-」がファーストチョイスではあるのですが、ちょっとがんばって南町通の本店に足を延ばすのも魅力的。そしてそのセレクトに2020年2月、新たに加わったのが「だし廊-Mix-」です。インパクトのあるだしを2種類組み合わせ、新たな味でありつつ、さすがのクオリティにまとめた逸品揃い。これはちょっと通っちゃいそうだなあ。
電力ビルの地下飲食街に下りていくと、そこにはタイ料理、韓国料理、山形蕎麦、さらには牛たんの名店「閣」など、よさげな飲食店が目白押しです。ランチタイムともなればどこで食べるか、ずいぶんと迷うことになるはず。とはいえ、今日は「だし廊-Mix-」です。代表の原田さん曰く「ちょっとヨーロッパの古民家をイメージしてみました」という外観は……なるほど言われてみると、壁に岩らしきものがゴツゴツと。でも、そもそも私はヨーロッパに足を踏み入れたことがないので、ゴツゴツの岩からは磊々峡くらいしか連想できません。うん、でも見ているうちにフランスの田舎にある民家のような気がしてきました。
飲食店のメニュー表にはおおむね法則があります。わかりやすいものだと、いちばん目立つ大きいものがおすすめの品であること。たて組のメニュー表では一番右、よこ組のメニュー表であれば左、これがまあ、その店の味を表す代表的メニューということなのだろうと。「だし廊-Mix-」のメニュー表は、パッと見、同列に3つのラーメンが並んでいます。大きさもまったく同じなので、どれにしようか迷うのですが、よく見ればよこ組のメニュー。なるほど、となると一番左か……「サバと鶏だし」、王道なメニューをここに持ってきました、という雰囲気が濃厚に感じられます。でもまあ、鶏は本店でも味わえますし、サバだしもおやっという感じではありますが、煮干しですので味の想像はつきます。2番目はと……「牛とトマトだし」! これですよ、これ。まるっきり洋食じゃないですか。ほぼ牛とトマトで決まりかなぁ、と思って3番目を見ると、そこには「ホヤと茸だし」。ホヤはないよね、ホヤは。うん、ホヤ嫌い。あ、いや嫌いとまではいかなくても、少なくとも好きではない。
子どもの時、よく見ていた戦隊ものに例えるなら、王道の「サバと鶏だし」は赤レンジャー、「牛とトマトだし」は参謀役の青レンジャー、「ホヤと茸だし」はお笑い担当の黄レンジャーって感じでしょうか。なんてことを考えてたら原田さんはそれとなく「ホヤと茸だし」の製作秘話をふってきます。 そこまで原田さんが言うのなら「試しに食べてみましょう」となり「ホヤと茸だし」が目の前にあります。 香りがいいです。ホヤは軽く香ってきますが、ひと口すすった時、ホヤのえぐみはもはやマイルドに昇華し、スープに必要な極上のエッセンスに変わっています。これはうまい! たぶん、こういう塩ラーメンを作りたいと思っているラーメン店の店主は多いんじゃないかと思われます。あっさりの部類を志向して作った時、インパクトのない味に陥りがちなラーメンって実は多い。なので、あっさりしていて上品、なおかつ舌にインパクトを残せるスープは、夢にまで見たラーメンとなるわけです。で、ホヤは強い個性を持っているので、あっさり上品にまとめても、インパクトがスープに滲み出てしまう。原田さんは、またしてもすごいラーメンを作ったものです。
「だし廊-Mix-」では、昼と夜でガラッとメニューが変わります。3本柱という構成は同じですが、夜はすべてつけ麺。ここでは、もう迷うことなく「濃厚雲丹のつけ麺」を選択します。ドラフト会議で田中将大を4チームが競合指名する中、前田健太を1本釣りした広島東洋カープのように。余談ですが広島って、球団名になんで「東洋」って入れてるんだろう。最近、東洋という言葉自体、あまり使わないからちょっと新鮮ですな。 さて田中将大……いや、前田健太……あ、ではなく雲丹つけ麺では、つけ汁にうにが100gほど入っています。豪華です。これで1050円はちょっと安過ぎなのではないでしょうかっていうくらい。
うにをバターと一緒に低温で炒め、こくと香ばしさを出していて、麺に合わないはずがないっていうパターンです。無限に食べられるくらいうまい! さらに、付け合わせの卵黄を投入すると味が濃厚になるので、後半戦は卵黄入りでお楽しみください。
2020年8月時点での情報です。