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盛岡の街に50年、変わらぬ味で愛され続ける名物スパゲティがある。それが「モンタン」のピリ辛スープスパゲッティ「ア・ラ・モンタン」だ。盛岡人の知人いわく、それは「周期的に“食べたい病”がやってくる味」。そんな盛岡人を惹きつけてやまない個性派麺グルメを紹介しよう。
「モンタン」の名物スパゲッティ「ア・ラ・モンタン」が生まれたのは50年前。ジャズ喫茶「モンタン」のまかないメニューとして誕生したのが始まりだった。そのくせになる味わいは徐々に評判になり、いつしか店の看板メニューに。その後、店は一度閉店してしまったが、スタッフだった小川さんが独立し「モンタン」とスパゲッティー「ア・ラ・モンタン」を復活させた。
現在お店は、小川さん親子で営んでいる。息子さんが言うには“「ア・ラ・モンタン」を出すために、父は店を始めたようなもの”なのだ。作っている本人が惚れ込んだ味…それは間違いなくうまいに違いない。いやがうえにも期待が高まっていく。
「モンタン」の歴史を伺ったところで「ア・ラ・モンタン」をオーダー。
ほどなく、陶器の皿に乗せられた透明なガラスの器に、赤いスープスパゲッティが盛られ運ばれてきた。ほかほかと湯気が立ち上り、たっぷりとかけられた粉チーズが今にもとろけ出しそうだ。
さっそくひと口。…が、熱い!あまりの熱さに出鼻をくじかれる。聞けば最後まで熱さをキープするため、最後の仕上げに秘密があるのだそう。残念ながら具体的には教えてはもらえなかったが、「いつまでも冷めない」といわれる老舗の技があるのだ。
気を取り直して、火傷に気をつけながら麺を食べる。
まず、太麺のパスタの、唇でも噛み切れるほどのやわらかさに驚かされる。茹で加減といえばアルデンテが一般的になりつつある世の中で、「ア・ラ・モンタン」は断固として“くったりやわらか”。50年前から決して“変わらないこと”を守り続けているのである。
麺にからむピリ辛のスープは、やや酸味がありさっぱりとしている。トマトスープに、炒めたベーコンと玉ねぎの旨みが溶け込んだ深みのある味わい。そこにチーズが加わりさらにコクを増している。
熱さと辛みが食欲を刺激する。麺をすする手が止まらない。気づけばスープの最後の一滴まで飲み干してしまう。なるほど「くせになる味わい」とはこういうことかと、納得させられる。
盛岡の麺グルメといえば「盛岡冷麺」「わんこそば」「じゃじゃ麺」。地元の人が愛する味をさらに求めるならば「ア・ラ・モンタン」もぜひ食べて欲しい。半世紀に渡り愛され続ける味。個性あふれるそのスパゲッティは、一度食べればきっと盛岡の味として脳裏に刻まれることだろう。
※2017年3月時点での情報です。