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猪苗代湖のほど近くで、明治時代から続く老舗茶屋がある。「元祖清水屋」だ。店の名物は、作り続けて100年以上になる、まんじゅうの天ぷらである。
薄皮でこし餡を包んだオーソドックスな茶まんじゅうに、適度に衣を付けて揚げたもの。「うちのはほんとに田舎の天ぷら。衣をつけたらアツアツの油で手早く揚げるだけ(笑)。天つゆとか、そういうしゃれたものはないの。醤油を付けて食べるのがいちばん合うのよ」と豪快に笑いながら話す女将の山口和子さん。
もともと会津地方では、仏壇に供えられて日が経ったまんじゅうを天ぷらにして食べる習慣があった。それゆえ清水屋でも「店でも出してみっか」となったのだとか。
アツアツを口に頬張ると、天ぷらのサクッとした食感のあとに、ムニュッっとやってくるまんじゅうの感触が絶妙なのである。甘いものを食べたあとに無性にしょっぱいせんべいが食べたくなる、という経験は誰しもあるはず。そして、しょっぱいもののあとには、さらに甘いものが……。
そうして際限なく、“甘いしょっぱい運動”を繰り返してしまうというのが人間の性である。
まんじゅうの天ぷらは、まんじゅう&天ぷらの組み合わせに醤油をつけることで、“甘いしょっぱい運動”をたった1個でできてしまうのだ。恐るべし、まんじゅうの天ぷら。
清水屋では、まんじゅうの天ぷら1個に、にしんとスルメの天ぷらを2つずつプラスした「天ぷら盛り合わせ」(400円)も人気である。
会津の郷土料理にひんぱんに登場するにしんは、天ぷらにするとほっくりとした身がいっそうやわらかく感じられて美味。プリッとした食感のスルメも味わい深い。それゆえ常連さんの中には、ざるそばと天ぷら盛り合わせを同時にオーダーする強者が多いのだとか。
土産にも喜ばれる清水屋のまんじゅうの天ぷら、家で食べる時には軽くオーブンであぶることを忘れずに。
※2012年7月時点での情報です。