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人口55000人余りの小さな町に、100軒以上のラーメン店が点在するラーメンの街・喜多方。元祖や本家を名乗る店は数多いが、正真正銘の喜多方ラーメン発祥の店が「源来軒」だ。
大正末期に中国から渡ってきた初代店主・藩欽星氏が屋台で売り歩いた「支那そば」が、そのルーツ。やがて喜多方駅前に店を構えた藩氏は、多くの弟子を取り、惜しげもなく自らの技を伝授したという。それが、現在の喜多方ラーメン繁栄の礎を築いたのだった。
現在の場所に店ができたのは昭和元年のこと。以来、幅広の縮れ麺に、煮干し香るあっさり醤油スープという、喜多方ラーメンの本来の姿を守り続けている。
その日の気候によって素材の配分を変え、味を調整するというスープは、トンコツ、鶏ガラ、昆布、野菜、煮干しなどの旨みを余すところなく引き出した奥行きのある味わい。毎日、安定した味に調整するのは、長年の経験と勘が築き上げた達人技があってこそ。極めつけは、青竹を使って打つモチモチの麺で、現在でもこの手法で麺打ちを行なっている店は数少ない。
毎日食べても飽きない、愛され続ける元祖・喜多方ラーメンとともに、地元客の注文が多い隠れ人気メニューが「ワンタンメン」だ。
向こう側が透けて見えるほど薄く、しかも箸で持ち上げても切れない強靭なコシを持つワンタンは、麺と同じく青竹で手打ちして作られる逸品。喉ごしのよい皮に包まれる具は、シンプルに豚肉のみ。ジューシーな肉汁がスープに溶け出し、ラーメンとはさらにひと味違った旨みが味わえる。
源来軒を訪れて、これを食べずして帰るのは誠にもったいない、と俺は思う。モチモチ麺とつるつるワンタンが、丼の中から「おいでおいで」する魅惑の一杯。その誘惑に素直に身をまかせようではないか。
※2012年6月時点での情報です。