仙台の編集プロダクション・シュープレスがお届けするWebマガジン
仙台駅東口……駅前といえば駅前であるが、ややひっそりとした感のある小さなビルの2階に、その店はある。
カフェ、というこじゃれたジャンルではなく、昔の喫茶店といった風情。そして壁の本棚にはたくさんの漫画、漫画、漫画……。創業からかれこれ30年というから、現代の漫画喫茶が登場する前より、すでに漫画天国の店だったのである。
さて、そんなタピオラに、俺が仙台に居住して以来の大好物がある。
「カレースパ」だ。
カレーというのは、どんな食材をも自分色に染めあげてしまう、恐るべき料理である。その力は、この店のカレースパにおいてもいかんなく発揮されている。
大きなニンジン、ジャガイモ、そして豚バラ肉がゴロゴロっと入ったカレーに寄り添う、たっぷりのスパゲティ。素朴なカレーの味を想像しながら、スパゲティに絡め口に運ぶと、自分の認識の甘さを思い知らされる。
タピオラのカレーは、タピオラでしか味わえないガツンとスパイシーな、インパクトあるカレーなのだ。
「いや、まあ、そんな特別なにかしてるってわけじゃ……カレーを全て手作りしているところくらいかなあ(笑)」とはマスターの弁。スパゲティがカレールゥで炒められているからだろうか、全体にとても香ばしく食欲が刺激される。肉や野菜の旨味が加わってまろやかだが、後味はけっこう辛いのである。
スパイスだけでなくダイナミックに唐辛子が入っているのであろう。さらにはスパゲティのカレーの染み加減が絶妙で、このあたりもB級グルメ心をくすぐるポイントである。
こってりしすぎるとスパゲティとの絡みが悪いし、かといってカレールゥがあっさりだと物足りない。その絶妙のバランスをはずさず過不足なく仕上げているのが、この店のカレースパなのである。
俺も何度かタピオラのカレースパを再現すべく、自宅でチャレンジしているのだが、そのたびに無謀な試みであったと後悔する。
650円というお手頃価格に加えて、ボリュームたっぷりの大満足メニュー。店に足を運んで、マスターの腕が作り出す間違いない味をいただくのが賢くおいしい選択であろう。
※2012年6月時点での情報です。