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横手といえば、目玉焼きに福神漬けをトッピングした「横手やきそば」で知られる街だ。ささやかな自慢を許していただけるならば、俺は横手市内で名の知れたやきそば店は、ほぼ食べ尽くした男である。
無関係だが「横手かまくら」だって毎冬のように行っている。そんな俺が、ひさびさに胸躍るような経験をしたのが「皆喜多亭」の肉玉カレー焼きそばだ。
鉄板の上でジュージューと大きな音を立てながら運ばれてきたのは、真ん中に目玉焼き、左にカレー焼きそば、右に普通の焼きそばというように鉄板の上で華麗に分けられた一品。
「せっかく横手に来たんだからノーマルな横手やきそばも食べたいし、皆喜多亭のカレー焼きそばも食べたい……」と悩める観光客たちが、両方のおいしさを一皿で味わえるよう親切設計されているのだ。
食べる手順としては、通常の焼きそば→目玉焼きを割った焼きそば→そして最後にカレーを混ぜた焼きそば、と攻めていくのが王道と思われる。
焼きそばはコクのあるソースが効いた、オーソドックスな横手の味。カレーも日本人好みのポークカレー。しかし、この焼きそばとカレーが一緒になると驚くべき化学反応を引き起こし、旨さが増すのである。
全体の味をまろやかにする目玉焼きの健闘は言うまでもない。やや甘めながらアツアツの鉄板で香ばしくなったソースが染みた焼きそばに、絶妙に絡むカレーのドテっとした感じが、実にB級グルメ的なすばらしい食感なのである。
すでに焼きそばという主食があるにも関わらず、白いご飯も食べたくなってしまうのは私だけであろうか。いや、さすがに注文はしなかったが……。
1983年に開業した皆喜多亭は、もともとカレーが人気の店であったという。メニューにはさりげなく焼きそばもあり、お客さんの要望から裏メニュー的に作ったのがカレー焼きそば。それが好評だったこともあり、いつしか店のグランドメニューへと昇格していく。
ちなみに通常の焼きそばは500円、肉玉カレー焼きそばが600円と、いずれもたいへんリーズナブル。コストパフォーマンス的に言って、肉玉カレー焼きそばの圧倒的なお得感は特筆に値しよう。
※2012年6月時点での情報です。