仙台の編集プロダクション・シュープレスがお届けするWebマガジン
たこ焼きは、大阪発祥である。
かの地で食べたたこ焼きは、外カリカリ・中とろとろで、焼きたてだと中身のとろとろ部分がすこぶる熱かったものである。定番のたこ焼きは、この外カリカリ・中とろとろであることが多いのだが、仙台にて俺が時折向かう「龍 これはうまい」のたこ焼きの場合、定番とは微妙に一線を画している気がする。
その食感は「外ふわカリ、中ふわトロ」と言えば伝わるだろうか。外の生地はしっかりとしつつ、口中での感触はやさしいのだ。
「おかえり~」龍の主人は必ずこの挨拶で出迎えてくれる。思わず「ただいま~」と言ってしまった後に、「さて、今日はどのたこ焼きを食べるかな」となる。
龍はたこ焼きの種類が多いのだ。ソース、醤油という定番のほかに、塩こしょう、からしソース、カレー、キムチなどなどその数は20種近い。男子たるもの店先で悩むなどもってのほかであるが、たこ焼きで20種ともなると、どうしても悩む。
悩んだ挙げ句に、ソース味と醤油味の2種類のたこ焼きを注文したのが、俺と龍の出会いであった。そんなことを繰り返しつつ、「とりあえずビール」的にたどりついたのが醤油味のたこ焼きであった。
大玉といっていいサイズのたこ焼きには、醤油だれ、それに一味唐辛子とマヨネーズがかけてある。青のりも鰹節もなし。構成としてはシンプルと言えなくもないが、醤油・マヨネーズ・一味唐辛子の組み合わせ自体が、当世風に言うならば「かなりヤバイ」のである。
この組み合わせは、どんな食べ物に対しても……茹でたブロッコリーであろうと炙ったイカであろうと焼きそばであろうと……とにかくあらゆる食べ物に合ってしまう魔法の味付けなのだ。四十男とて、その魔法の前ではなんら抵抗などできぬのである。
かくして、医師からコレステロール値を気にするよう注意されているにもかかわらず、ついつい、6個のたこ焼きを完食してしまうのであった。
ちなみに龍のたこ焼きは、焼きたての熱々がおいしいのはもちろんだが、冷めてもなかなかいける。いや、“なかなか”なんてものではない。個人的には少し冷め加減のほうが、醤油と生地の旨みがたっぷりと味わえ、好もしく思えるほどだ。
※2012年6月時点での情報です。